空想小説Vol.1(実在の人物とは関係ありません)
- 新家 和
- トピック作成者
4 年 7 ヶ月 前 #4456
: 新家 和
その日は、どんよりとした曇り空だった。
大阪の定宿、大阪駅前のHホテルをチェックアウトしたのは、午前10時前。
今日11時にお伺い予定の横田さんの自宅は兵庫県芦屋にあり、タクシーを使えばここから30分ちょっとで到着できる。
少し時間があるので、タケさんと私は、地下街に向かった。
通勤ラッシュも終わり、地下街を歩く人の数はまばらだ。
半分くらいのお店はまだ開店しておらず、シャッターが目立つ地下街を、私とタケさんは、黙々と歩く。
ちょっと寂れた雰囲気が続いた後、突然、煌々と照明を放つ店舗が現れた。
「チケットショップ大国」
金券ショップ。タケさんは無類の金券ショップ好きで、大阪出張の際は必ずココを訪れる。
タケさんは、ショーケースの中のチケット類をジロジロ眺めている。
わたしは、壁一面に張り出された価格表を軽く一瞥したのち、カウンター越しの店員さんに、新大阪-東京のグリーン車指定席券2枚を注文した。
商談終了後、帰京するためのキップである。
「あ、ちょっとまって。これも追加ね。」
タケさんが指差していたのは、全国チェーンのファミレスの5,000円お食事券だった。
わたしは、タケさんにお食事券が必要な理由を聞くこともなく、店員さんに、
「すいません、まとめて領収書おねがいします。宛名は【ナショナル・ゴールド株式会社】で」
と伝えた。
タケさんとわたしは地下街から階段を上り、地上に出た。
新御堂筋を走る流しのタクシーをつかまえて、芦屋の横田さん宅へ向かう。
あいかわらず、空はどんよりと曇っているが、車内はエアコンが効いて快適。
タケさんは、ノートパソコンを開き、ブログ用の記事を無心で打っている。横にわたしがいることは、おそらく、まったく意識されていない。
わたしは終始、手持ち無沙汰状態のまま、横田さん宅に到着した。
大阪の定宿、大阪駅前のHホテルをチェックアウトしたのは、午前10時前。
今日11時にお伺い予定の横田さんの自宅は兵庫県芦屋にあり、タクシーを使えばここから30分ちょっとで到着できる。
少し時間があるので、タケさんと私は、地下街に向かった。
通勤ラッシュも終わり、地下街を歩く人の数はまばらだ。
半分くらいのお店はまだ開店しておらず、シャッターが目立つ地下街を、私とタケさんは、黙々と歩く。
ちょっと寂れた雰囲気が続いた後、突然、煌々と照明を放つ店舗が現れた。
「チケットショップ大国」
金券ショップ。タケさんは無類の金券ショップ好きで、大阪出張の際は必ずココを訪れる。
タケさんは、ショーケースの中のチケット類をジロジロ眺めている。
わたしは、壁一面に張り出された価格表を軽く一瞥したのち、カウンター越しの店員さんに、新大阪-東京のグリーン車指定席券2枚を注文した。
商談終了後、帰京するためのキップである。
「あ、ちょっとまって。これも追加ね。」
タケさんが指差していたのは、全国チェーンのファミレスの5,000円お食事券だった。
わたしは、タケさんにお食事券が必要な理由を聞くこともなく、店員さんに、
「すいません、まとめて領収書おねがいします。宛名は【ナショナル・ゴールド株式会社】で」
と伝えた。
タケさんとわたしは地下街から階段を上り、地上に出た。
新御堂筋を走る流しのタクシーをつかまえて、芦屋の横田さん宅へ向かう。
あいかわらず、空はどんよりと曇っているが、車内はエアコンが効いて快適。
タケさんは、ノートパソコンを開き、ブログ用の記事を無心で打っている。横にわたしがいることは、おそらく、まったく意識されていない。
わたしは終始、手持ち無沙汰状態のまま、横田さん宅に到着した。
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- 新家 和
- トピック作成者
4 年 7 ヶ月 前 #4452
: 新家 和
今日のスケジュールを確かめる余裕もなかった。
スイートルームの中は、いつものように最適な温度と湿度。タケさんは、ソファーに座り、今朝の日本経済新聞をぼんやり読んでいる。
私は、ルームサービスで頼んだ食事を狭いテーブルに並べ朝食の準備をしている。味にうるさいタケさんは、引き立ての出汁を使った味噌汁を、毎日飲みたいとわがままをいうので、かなり面倒だ。そのあと、催促してシャワーを浴びてもらう。その間に今日着るものを用意し、乱れたベットを整える。
朝食が終われば、食器を片付け、剛之の身支度、今日訪問するお客様との商談書類のチェックを始める。パソコンもスマートフォンも、どちらも旧型で動きが遅いから、なかなかちゃんと働かない。それらが終わると、今度は自分の身支度の準備だ。
忙しい。とにもかくにも、やることが多い。秘書って、どうしてこんなに忙しいのだろう。私は東山剛之の秘書、根岸理華。それほど実務能力が高いわけではないから、仕方がないか。
とはいえ、何か楽しみを見つけなくては。このままでは、忙しさから逃避するために、いつか、タケさんをシャットダウンしてしまいそうだ。
タケさんの奥さんがちょっとだけ羨ましい。ねぎらいの言葉のひとつもなければ、秘書の地位を放り出すこともできるし、決心すれば、退社することもできる。しかし、私には、それが許されていない。こんな境遇の中で、こころの平静を保ち続けるためには、何か楽しみを見つける必要がある。
スイートルームの中は、いつものように最適な温度と湿度。タケさんは、ソファーに座り、今朝の日本経済新聞をぼんやり読んでいる。
私は、ルームサービスで頼んだ食事を狭いテーブルに並べ朝食の準備をしている。味にうるさいタケさんは、引き立ての出汁を使った味噌汁を、毎日飲みたいとわがままをいうので、かなり面倒だ。そのあと、催促してシャワーを浴びてもらう。その間に今日着るものを用意し、乱れたベットを整える。
朝食が終われば、食器を片付け、剛之の身支度、今日訪問するお客様との商談書類のチェックを始める。パソコンもスマートフォンも、どちらも旧型で動きが遅いから、なかなかちゃんと働かない。それらが終わると、今度は自分の身支度の準備だ。
忙しい。とにもかくにも、やることが多い。秘書って、どうしてこんなに忙しいのだろう。私は東山剛之の秘書、根岸理華。それほど実務能力が高いわけではないから、仕方がないか。
とはいえ、何か楽しみを見つけなくては。このままでは、忙しさから逃避するために、いつか、タケさんをシャットダウンしてしまいそうだ。
タケさんの奥さんがちょっとだけ羨ましい。ねぎらいの言葉のひとつもなければ、秘書の地位を放り出すこともできるし、決心すれば、退社することもできる。しかし、私には、それが許されていない。こんな境遇の中で、こころの平静を保ち続けるためには、何か楽しみを見つける必要がある。
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